2021年の規制強化により
日本の昭和時代に誕生した工場・倉庫には、屋根や外壁に波型スレートが多く使われてきました。その素材にはアスベストが使われているケースが多々あり、
そのアスベストという単語を知っていても、その危険性と対策方法までを理解されている方は多くありません。
その昭和時代、平成時代によく使われてきたアスベストという素材は、人体に被害を及ぼします。適切な対策を「行わなければ、知らず知らずのうちに、自社の工場から有害物質が出ていく事にもなりかねません。
そこで、まずはアスベストのことを知っていただき、どのような対策が必要かを知っていただければと思います。
アスベストについて理解を深める
01アスベストとは何か?
石綿(アスベスト)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。
その繊維が極めて細いため、研磨機、切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹付け石綿などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が 吸入してしまうおそれがあります。以前は波型スレートの屋根材、外壁材の建築資材において、保温断熱の目的で石綿が使用されてきましたが、昭和50年に原則禁止さ れました。
その後も、スレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などで使用されましたが、現在では、原則として製造等が禁止されています。
ただし、アスベスト(石綿)は、そこにあること自体が直ちに問題なのではなく、空気に乗って飛び散り人が吸い込むことが問題であるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。
日本のアスベストの使用と規制の歴史
時期 | 概要 |
---|---|
昭和30年頃 | 建材としての使用が一般化 |
昭和50年 | 石綿を5%を超えて含有する吹付作業の原則禁止 |
昭和55年 | 石綿含有吹付けロックウールの使用終了 |
昭和62年11月 | 建築物耐火構造規定から吹付石綿を除外 |
平成7年1月 | 阪神・淡路大震災 |
平成7年4月 | 石綿を1%を超えて含有する吹付作業の原則禁止 |
平成16年10月 | 石綿を1%を超えて含有する主な建材、摩擦材及び接着剤の新たな製造等の禁止 |
平成17年6月 | 石綿製造工場周辺での石綿由来疾病発生事案 |
平成17年7月 | 石綿を1%を超えて含有する吹付作業の全面禁止 |
平成18年9月 | 石綿を0.1%を超えて含有するすべての物の製造・輸入・譲渡・提供・新たな使用の禁止 |
平成24年4月 | 石綿を0.1%を超えて含有するすべての物の製造・ 輸入・譲渡・提供・新たな使用の全面禁止 |
近年では災害の甚大化によって損壊した石綿使用建築物等から
石綿が飛散するおそれが高まっており
適切な処理を行うことの重要性が増しています。
02アスベストが引き起こす
健康被害について
アスベストの繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があるとWHOによって報告されています。
アスベストによる健康被害はアスベストを吸い込むとすぐに体に影響が出るというものではありません。アスベストを長年にわたり吸い込み続けてから発症します。
中皮腫という健康被害は平均35年前後という長い潜伏期間を経て発症することが多いとされています。
アスベストの主な3つの健康被害
- アスベスト肺
この病気は肺が線維化してしまう病気です。アスベストの粉塵を10年以上吸い込み続けた労働者に起こることが多いとされ、潜伏期間は15年から20年とされています。
初期症状は、軽い息切れと運動能力の低下とされています。
症状が進むと呼吸が困難になりアスベスト肺の患者の約5人に1人は重度の呼吸不全を起こし通常の生活が送りにくくなるといわれています。 - 肺がん
アスベストを吸い込み続けると肺がんを発症することもあります。
しかし、アスベストが肺がんを引き起こすメカニズムはまだ完全には解明されていません。
アスベストと喫煙は肺がんの発症に深い関係があるとされています。
潜伏期間は15年から40年あるとされ、恒常的にアスベストを吸い込み続けた人ほど発症の確率が高まるとされています。 - 悪性中皮腫
肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍です。若い時期にアスベストを吸い込んだ方の ほうが悪性中皮腫になりやすいことが知られています。潜伏期間は20~50年といわれています。
03日本のアスベスト規制について
アスベストの規制に関しては昔から存在していたものの2021年にその規制が強化されました。
概要としては「建築物等の解体等工事における石綿の飛散を防止するため、全ての石綿含有建材への規制対象の拡大、都道府県等への事前調査結果報告の義務付け及び作業基準遵守の徹底のための直接罰の創設等、対策を一層強化する。 」と環境省から発表されています。
過去にはアスベストによって健康被害を受けたことで訴訟が行われたこともあります。その事例をご紹介します。
【建設型アスベスト訴訟】
建設業務に従事していた元労働者等とその御遺族の方が、石綿による健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったからであるとして、国家賠償法に基づく損害賠償を請求した訴訟(建設アスベスト訴訟)について、令和2年12月14日以降、最高裁判所が国の上告受理申立てを受理しないとの決定を行ったことにより、国の責任を一部認めた高裁判決が確定するとともに、令和3年5月17日の最高裁判決において、国敗訴の判決が言い渡されました。
引用:法務省 「アスベスト訴訟(建設労働者型)」
この裁判では、適切なアスベストの規制がなされなかったことにより国が敗訴するという結果になりました。それだけアスベストの健康被害は甚大なものであり、適切な処理をしなければならないのです。
アスベストに関する規制はかなり細かくルールが定められてあり、それを守らなければ罰則を受けることになりかねません。ここではそのルールを細かく説明することは控えさせていだき、4つのポイントを簡単に説明いたします。
アスベストの規制に関して詳細をお聞きになりたい方はぜひ一度アスベスト建物改修総研にご連絡いただけますと幸いです。
2021年4月から施行される
アスベスト規制の概要
-
規制対象の建材を拡大
アスベストを含むすべての建材が規制対象となり、除去作業には独自の作業基準が新たに設けられる
-
罰則の強化と対象の拡大
都道府県等による立ち入り検査の対象を拡大。
最適な除去方法を実施しない場合は罰則が適応される。
また、下請負人にも作業基準遵守義務が適応される。 -
事前調査の信頼性の確保
事前調査の方法を法定化。
「必要な知識を有す者」とみなされた者の事前調査を義務化。
一定基準以上の建物に関しては都道府県へ調査結果の報告が義務化。 -
作業記録の作成と保持
作業記録の作成・保存が義務化。
作業結果の発注者への報告を義務化。
04アスベストを含む建物の具体的な
修繕方法
アスベストは放置しておくと健康被害を及ぼすこともある物質です。
そして、2021年4月に施行された規制強化により、適切にアスベストを処理しなければ罰則が与えられます。
昭和に生まれた多くの工場・倉庫の、屋根材、外壁材にはアスベストが多く使用されています。そのアスベストに対する対策は今後必ず必要となってきます。
まずは、アスベストの専門家に問い合わせを行い具体的な修繕方法を聞くことをお勧めします。
弊社では、まずは調査からスタートされる事をオススメしています。(下記ページをご覧ださい)
https://asbestos-soken.com/flow/
アスベスト建物改修総研でも無料で相談を受け付けておりますのでお気軽にお問い合わせ下さい。